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Youki的【生誕130年記念 藤田嗣治展 東と西を結ぶ絵画】 [アートレクチャー]

PROJECT K : Kikko & Youki & Micchanの アナログブログ
2016.06.28(執筆担当:Kikko)たぶんVol.263
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今回は、名古屋市美術館で現在開催中の【藤田嗣治展 ~東と西を結ぶ絵画~】へ足を運んだので、アート鑑賞ナビゲーター視点で、その感想をレポートさせて頂きたいと思います。

藤田嗣治は、20世紀初期のパリを中心に世界でその名を残した、美術史上でも数少ない日本人画家なのですが、会場に入ってすぐに私たちを迎え入れてくれるのは、藤田がパリにわたる前に日本で描いた【自画像】と、パリに渡った直後に描かれた【キュビズム風静物】です。
フジタ.png
↑藤田嗣治 【自画像】(1910年) >まだ日本にいるころの自画像

キュビズム風静物.jpg
↑藤田嗣治 【キュビズム風静物】(1914年) >パリに渡って間の無い頃の作品

【キュビズム風静物】は、パリで出会ったピカソとそのキュビズムという手法に対する衝撃からキュビズムに挑戦せずにはいられなかった、初期の藤田の葛藤が垣間見える作品なのですが、今回の展覧会で本物の作品をみて、画集だけでは気が付かなかった発見がありました。

確かにこの【キュビズム風静物】は、キュビズムの組み立て方こそピカソには遠く及ばないものの、赤・青・黄・緑を中心とした色彩が、絶妙なバランスで配置されていて、藤田の“色彩バランス”の才は、ピカソに勝るとも劣らないかも!?・・・と、感じました。

その中でも、特に私の目を引いたのが、緑色!
巧みにちりばめられた緑色が、一見すると雑多な画面に、程よい気品を与えているんです。
特に、全てを支える机の“脚”が全て緑色なのが、この絵に落ち着きと安定感を与えている最たる仕掛けかも。

そしてさらに注目してしまったのは、緑色の“質”!
フジタ.png

初期のこの作品にみられる緑色は、『緑茶(抹茶)色』といいますか、
『深く濁りのある緑』 だからこそ、一層の落ち着きと気品を感じるんですよね。

「でもこの『深く濁りのある緑』って、あまりヨーロッパでは見かけない緑だなぁ・・・。
なんていうか、すっごく日本っぽい緑・・・。
藤田は日本人だから、当たり前といえば当たり前かぁ・・・。
あっ、そういえば、
日本で描いた【自画像】で着ているジャケットも、同じような深緑だっ!」

そう思いながら、パリで才能ある画家として認められ、地位と自信を築いた頃に描かれた作品群エリアへ移り、渡仏10年目に描かれた【エレーヌ・フランクの肖像】(下図:1924年)という作品を目の前にして、再びハッ!としました。

藤田嗣治 【エレーヌ・フランクの肖像】(1924).jpg

緑色の“質”が、ガラッと変わっているのです!!

画像では伝わりづらく大変歯がゆいのですが、この肖像画に描かれているドレスは、心もシャキッと晴れるような、
『鮮明で透明感のある、クリアな緑』 なんです!

もはや、『緑』と日本語でいうよりも、『Green』と英語でいったほうがしっくりくる質感!

私は、この“緑色の質の変化”に、藤田が日本人画家から真のヨーロッパの画家に転身した証をみました。

そもそも日本とヨーロッパでは、“緑の質”が異なります。
この場合の“緑”とは、“絵の具の緑”ではなく、各国の風土に根付いて茂る“植物の緑”をさすのですが、日本に茂る緑は、日本の湿潤な気候に合った、蒸したコケのような濁った緑が多いのに対し、ヨーロッパに茂る緑は、カラッとした気候に合った、クリアで鮮明な緑が多いです。

そして実際に、美術史上ヨーロッパへ渡って洋画(油絵)を学んだ日本人洋画家が最も苦労したことは、ヨーロッパ特有の『クリアで鮮明な緑色』を、日本の湿潤な風土のもとで絵の具で再現することだったそうです。
・・・とすると、その困難さは、日本からヨーロッパに渡った場合でも、同じだったのではないでしょうか?

日本の『深く濁りある緑色』文化から抜け出し、いかに『クリアで鮮明な緑色』を絵の具で再現できるかが、ヨーロッパへ渡った日本人が「ヨーロッパ人画家」に近づくための重要課題だったのではないか。
・・・この予想が、そう的外れではないであろうことを、今回の【藤田嗣治展】をみて、私は確信しました。
 
その証拠にほら、日本で描いた【自画像】では渋い緑色だったジャケットも、パリ15年目に描いた【自画像】では、ヨーロッパ調Greenのシャツに新調しちゃってますもん♪
(※これも画像では違いが伝わりにくいのが、非っっっ常に歯がゆいです!)

もしかしたら、“緑” は藤田の勝負カラーだったのかもしれませんね ^^

フジタ.png
↓↓↓↓↓↓↓↓↓この緑が変化して・・・↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

グリーンシャツver..jpg
↑ 【自画像】 (1929)>パリに渡って15年目

展覧会へ足をお運びの際には、どうぞ皆様も “緑色” に注目してみてください!

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